緑色の微睡み

睡眠不足です

3月に読んだ本

『サバイバー』

ファイトクラブでカルト的人気を得たチャック・パラニュークの小説。

カルト教団の生き残りである孤独な男テンダー・ブランソンがジェット機のハイジャックを行い、その中で自分の人生を独白する小説。この小説の章立ては47で始まりカウントダウンされ最後は1で終わる。

要はことの始まりから終端までの物語で、全てを語り終えた時、ジェット機は墜落しテンダー・ブランソンという男の物語も終わる。

ラニュークのキレのある文体はファイトクラブから続いており、内容の洒落にならなさも健在。

 

『言壺』

神林長平の言語SFを集録した短編集。

一つの文章により世界が変貌する短編や新しい匂いのメディアについての短編などアイデアに溢れたいる。

基本的はワーカムという著述支援マシンにまつわるものが多く、それにより言葉が変化し、人の認識も変化するというテーマが通底しているように感じられた。

確かに言葉というものは不思議で、ある種の出来事に上手い例えを当て嵌めることが出来るとその出来事の見方が変貌したりする。

言壺を構成する作品世界ほどではないが、現在の自分もiPhoneでこの文章を書いているため、現在の認識はiPhoneによって拡張された(あるいは歪められた)認識によって世界を見ているのかもしれない。

この文章だってiPhoneの変換予測によって出てきた言葉によって構成されている。自分は知らない間にiPhoneに導かれるままこの文章を書いているのかもしれない。

自由意志などないのかもしれない。