緑色の微睡み

睡眠不足です

5月に読んだ本

『インヴェンション・オブ・サウンド

チャック・パラニュークの長編小説。

ハリウッドという虚構を舞台にダークウェブの児童ポルノサイトで誘拐された娘を探す父親とハリウッド随一の音響技師の女がある事件において交わる物語。

この小説ではあらゆるものが虚構に埋もれていて、現実そのものが虚構に取り込まれているような気がしてくる。

そうしたフィクションとしての要素はこれまで翻訳されてきたパラニューク作品との共通項を見出せるが、ファイトクラブやサバイバーのような切れ味の良い文章があまりないように思えた。

 

『あなたの魂に安らぎあれ』

神原長平の第一長編。

火星を舞台に地下に住む人間と地上でこの世の春を謳歌するアンドロイドの捩れた関係の社会を描く。

そこに宗教的なテーマや夢の中で見た過去の出来事に纏わる記憶がストーリーに絡んでくる。

一つの大きな事件を中心に動き、人間とアンドロイドがほとんど差がなく描かれたり、それがストーリー上に大きな展開を生んだりするが目新しさはなかった。

この文章は読み終わってから少し時間をおいて書いているが、この小説を読みながら奇妙な感覚を抱いた記憶がある。玉ねぎの鱗茎を一つずつ剥がしていくが中心には永遠に辿り着かないないような。この感覚はなんなのだろう。