緑色の微睡み

睡眠不足です

4月に読んだ漫画

『スキップとローファー』(1-8)

石川県の端っこから東京に進学したみつみちゃんがクラスメイトと交友を深めて行く話。

大きな出来事が起きるわけではないけれど、日常における関係性ややりとりの情報量が非常に多く、東京の高校で頑張るみつみちゃんを応援したくなる。

テレビアニメも始まったのでそれも見たい。

 

チェンソーマン』(14)

飢餓の悪魔が登場。

デンジと暮らす支配の悪魔であるナユタも登場。

 

ディエンビエンフー TRUE END』(1-3)

コミックIKKI時代から続き、一度はバッドエンドを迎えたディエンビエンフー

その物語を最後まで語る「TRUE END」を目指した完結編。

プランセスとヒカルの物語を時折中断を挟みながら最後まで追ってきた身としては、ちゃんと最後まで物語を語り終えてくれたことに感謝しかない。

 

こみっくがーるず』(1-9)

四コマ漫画家のかおす先生が漫画家の女子寮に入り、寮の仲間との日々の生活や漫画家として葛藤しながら成長していく物語。

この漫画は作者のはんざわかおりさんの経験が大きく反映されている作品で、15歳で少女漫画家になった事やそこからオリジナル作品が出ずにアンソロジーに参加していたこともおそらく主要なキャラクターのエピソードとしてまとめられている。

簡単にWikipediaを参照するだけでこれだけのことが分かるが、おそらくそれ以上に作者の周囲のエピソードも織り込まれているのだろうと推測できる。

主人公のかおす先生がオリジナル作品の連載のために実家の両親をモデルにしているが、おそらく作者自身の姿が強く投影されているのでそれが作者であるはんざわかおりさんの創作方法なのだろう。

そうした観点で読んでみると、こみっくがーるずという作品の温かさは暖かい人物の手によって生み出され、その暖かさは周囲の人物からも伝わってきたことがよく分かる。

まずアニメを見ていて、それから完結してからこの漫画を読み始めて驚いたのは作者の溢れ出る「好き」が詰め込まれていたこと。

漫画、アイドル、アニメ、それから描くこと。そこに好きという感情が込められていて、読んでいる間は幸せな時間を過ごすことができた。

 

『夜と海』(1-3)

泳ぐことしか興味のない彩と彼女の泳いでいる姿が好きな月子。高校一年生から始まる二人の交流を描いた作品。

この作品は大きなドラマもないし、テンションの高いコメディでもない。二人の少女がプールやそれ以外で過ごす姿が淡々と描かれているだけ。

ただ、読み終えたあとこうした作品でしか作り得ない空気を感じることができた。

例えるなら、たった一人で泳ぐプールで生じた波紋のような作品なのかもしれない。

波紋は広がって、プールの縁に当たってやがて消える。その波の音や波紋の形を覚えているのは二人だけなのかもしれない。

 

『ダンピアのおいしい冒険』(5)

海賊船の航海士であるダンピアの冒険とそこで食べるものについて描いた物語の第5巻。

終盤に差し掛かってきた印象。

 

 

 

4月に読んだ本

『コールドスナップ』

アメリカの作家であるトム・ジョーンズの作品を舞城王太郎が訳した短編集。

作品を構成する声の一文に時折ハッとさせられるが、具体的に何が言いたいのか、どういう作品なのか上手く掴めなかった。

白人とアボリジニのハーフである少女が自分の人生を語る『ロケットファイア・レッド』はストーリーもわかりやすく、文章の語りの良さも相まってとても楽しめて読めた。

短編集の後半を飾る『ロケットファイア・レッド』以降の作品は分かりやすいのかもしれない。

筋ジストロフィーの女性の自殺を描いた『私を愛する男が欲しい』、罰として軍隊の厨房の鍋洗い係を数ヶ月行う事になる『ポットシャック』、ボクサーの悲哀と立ち直りを描いた「ダイナマイト・ハンズ』。

この辺りはどれも読みやすいし面白かった。

 

一口馬主POG本』

通常のPOG 本ではノーザンファーム社台ファームといったクラシックで上位に多く入る馬を生産する牧場の馬が多く取り上げられる。

それはPOGというゲームの構造上仕方がないことではあるが、一口馬主をやっている身としては自分が出資する馬を取り上げてもらえるととても嬉しい。

本書はそういった大手の一口馬主クラブ以外の会員の声から生まれたものらしい。

ちなみに僕の出資馬であるファセリア(ビスカリアの21)は牧場の期待する血統馬の一頭として取り上げられていた。

3月に読んだ本

『サバイバー』

ファイトクラブでカルト的人気を得たチャック・パラニュークの小説。

カルト教団の生き残りである孤独な男テンダー・ブランソンがジェット機のハイジャックを行い、その中で自分の人生を独白する小説。この小説の章立ては47で始まりカウントダウンされ最後は1で終わる。

要はことの始まりから終端までの物語で、全てを語り終えた時、ジェット機は墜落しテンダー・ブランソンという男の物語も終わる。

ラニュークのキレのある文体はファイトクラブから続いており、内容の洒落にならなさも健在。

 

『言壺』

神林長平の言語SFを集録した短編集。

一つの文章により世界が変貌する短編や新しい匂いのメディアについての短編などアイデアに溢れたいる。

基本的はワーカムという著述支援マシンにまつわるものが多く、それにより言葉が変化し、人の認識も変化するというテーマが通底しているように感じられた。

確かに言葉というものは不思議で、ある種の出来事に上手い例えを当て嵌めることが出来るとその出来事の見方が変貌したりする。

言壺を構成する作品世界ほどではないが、現在の自分もiPhoneでこの文章を書いているため、現在の認識はiPhoneによって拡張された(あるいは歪められた)認識によって世界を見ているのかもしれない。

この文章だってiPhoneの変換予測によって出てきた言葉によって構成されている。自分は知らない間にiPhoneに導かれるままこの文章を書いているのかもしれない。

自由意志などないのかもしれない。

3月に観た映画

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

この映画の特筆すべき点は混乱した状況を的確に纏めてエンタテインメントとしてる成立させたい部分にあるのではないかと思う。

正直なところ映像体験としてもSFとしても既視感がある。映画ではジャコ・ヴァン・ドルマル監督の『ミスター・ノーバディ』、ダーレン・アロノフスキー監督の『ファウンテン 永遠に続く愛』、小説では伴名練『滑らかな世界とその敵』。

自分が知っているだけでも似たような作品がこうやって上げられるが、伴名練の小説はさておき上記の映画2作品は正直作品として成功しているとは言いがたい。2作品とも映像体験としては素晴らしいが捉え所のない難解さを孕んでいるため、ストーリーと設定の理解が追いつかない側面がある。

しかし今作『エブエブ』はそうした難解さを鮮やかに振り払い、家族の映画としてまとめ上げる事でエンタテインメントとして成立させたのはなかなかの離れ技ではないかと思われる。

 

『フェイブルマンズ』

スティーブン・スピルバーグ監督の自伝的作品。

サム・フェイブルマン少年が映画と出会い、映画を生業しようとするところまで描かれる本作だが、サムを中心として描きつつも家族の映画であるため少々焦点がぼやけているように感じられた。

とはいえさすがはスピルバーグ。3時間近い作品だが、不思議と画面から目を離すことができず気づくと映画が終わっていた。

これは面白い構図を彼から教えてもらった成果なのだろうか?

 

『逆転のトライアングル』

タイトルの通り力関係を描いた映画。

まずカールとヤヤというカップルの力関係が描かれる。ヤヤは気づかないうちにカールを操ることがあるらしい。それに気づいたカールは現在の関係を対等なものへと変化させる決意をする。

場面が豪華客船へと移るとセレブリティであるカールとヤヤ、その他の大富豪たちと清掃婦の使う側と使われる側の構造が描かれる。

さらに無人島へ場面が変わると火起こしや食糧確保に長けた清掃婦が力を得ることで関係性が変化し、カールを支配下に置いていたはずのヤヤが清掃婦に恋人を奪われることで力関係が逆転する。

作中においてその辺りの説明があまりされておらず、淡々と場面が移り変わるために何が起きているか映像だけを追っていると理解しにくい側面がある。

個人的にもあまりピンとこなかった。

 

コンペティション

高尚な舞台劇のベテラン俳優と世界的スター俳優と奇人の天才映画監督が映画を制作する話。

冒頭に大成功した実業家が登場し、自分の名を残すために映画作ってくれと天才監督に依頼するところから物語は幕を開ける。

この映画は過剰に誇張された人物達によって物が展開される。ベテラン俳優、スター俳優、天才監督。(それから実業家)

それぞれの役割のカリカチュアような人物によるぶつかり合いは見ていてそれなりに楽しいが、この映画をコメディとしたいのかアート作品にしたいのかがあまり伝わって来ず、笑えないし大したドラマが始まるわけでもないまま終わってしまった。

アントニオ・バンデラスの演技は素晴らしいと思えたが、これ作品としては微妙なんじゃないのかなあと思います。

 

『シャザム! 神々の怒り』

DC原作のスーパーヒーロー映画の第二作目。

前作でファミリーとなったビリー達だが、肝心のビリーは家族を束縛しているのではないか、自分は本当の家族ではないので家から出ていかなければならないのではないか、と不安を抱えている。

兄弟の一人のフレディは転校してきた少女アンと恋に落ちる。その他の兄弟達の中にも問題を抱えていてそれが溝を生んでいるように感じ、ビリーはリーダーとしての自信を喪失していく。

そんな中、神の娘を名乗る姉妹が魔術師の杖を手に入れ、人間界に進出しようとしていた。

この映画は神の娘であるヘスペラ、カリプソ、アンテアとシャザムたちの戦いを描いたものだが、兄弟や家族の繋がりとスーパーヒーローとしての戦いがどことなく噛み合っていない印象を受けた。

神の娘たちの対立とビリーたちの結束が対比され、それが終盤の戦いへ繋がっていく展開は綺麗だが、冒頭のビリーの内的な問題は大雑把に解決されたようにしか思えない。

 

 

『ブラックライト』

リーアム・ニーソン主演のアクション映画。

FBIの秘密捜査員が危険な状態に陥った場合救出するトラヴィスという男をリーアム・ニーソンが演じている。

ラヴィスは今まで行ってきた仕事のせいか、神経強迫症のような戸締りを異常に気にしたりする側面を持っている。

それ故に孫娘に危険に対して注意するように強く言いつけたり、娘の住む家に勝手に防犯カメラを設置したりして煙たがられている。

ラヴィスはそろそろ引退して孫娘と平穏に暮らしたいが、彼に後ろ暗い仕事を任せてきたFBI長官はそうさせる気はない。

ある時トラヴィスの知り合いの捜査員の一人が警官に対して暴行を事件を起こしてしまう。トラヴィスはその捜査員に自分と組みやり直そうと持ち掛けるが、捜査員は「自分は一線を超えてしまった」と言い逃亡。なんらかの証言を新聞記者に話そうとする。

簡単に言うと現行の政府が自分たちに不利な方へ働きかける人物を秘密捜査員を使って抹殺していた。善悪の葛藤で正義に目覚めたトラヴィスが友人であるFBIの長官を告発するという話なのだが、イマイチ面白くなくトラヴィスの葛藤自体もそこまで大したものに思えない。

脚本に問題があるのか、編集に問題があるのか分からないが、この映画をもっと良くするためのシーンが足りないし、余計なシーンも多いような気がする。

リーアム・ニーソン主演のアクション映画は『96時間』とか『ラン・オールナイト』とか『フライト・ゲーム』とか結構好きなのが多かったので残念だった。

 

3月に読んだ漫画

『呪術廻戦』(22)

呪霊化した禪院直哉と覚醒した真希との死闘を描く。

剣豪と河童が出てきたのは唐突だったけど真希の覚醒回として非常に良かったと思います。

で、堕天とはなんなんですかね。そういう設定出てきてたのか今回が初めてなのか、記憶が不明瞭。

 

『黒猫と魔女の教室』(4)

合宿回後半。

普段やる気のないキャラクターが本来は凄まじい実力を秘めていて、というのはある種のクリシェなのかもしれない。

ただ金田陽介はそこをエモーショナルに描いてしまうため、やっぱり漫画が上手いなと思えてしまう。

 

『裏バイト 逃亡禁止』(9)

危険と隣合わせの裏のバイトをこなす2人だがその周辺の人々にも影響が及ぶ。

似た題材を扱っているためか『裏世界ピクニック』の設定に近似していっているように思える。これは一つの形態への帰着なのかもしれない。

 

『ブルーロック』(23)

vs英国編の最終巻。いかにカイザーを上回るかという構図は凛を上回る際の構図と近いなと思う。

潔のゴールがないため若干消化不良ではあるが、この試合での進歩はものすごく大きい。

 

『よふかしのうた』(15)

修学旅行編。

吸血鬼の設定の根幹に触れるようなやり取りやナズナの母に近い人物が登場する非常に重要なエピソードが多い。

次巻予告の「恋バナしようや」は修学旅行における夜更かしにおいて非常に重要な要素なので楽しみ。

 

『葬送のフリーレン』(10)

黄金のマハト編の続き。

今回がフリーレンで1番面白いかもしれない。

名前の知られていない大魔族の登場や人間と魔族の違いについて設定の根幹に触れられているからそう思えるのかもしれない。

 

『私を喰べたい、ひとでなし』(6)

過去編が中心。肉を分け与えるところで高橋留美子の『人魚の森』を連想した。

そういえば、なんで今まで思い出さなかったんだろう。

 

『平和の国の島崎へ』(2)

物語が進むとさらに平和とは?と思わせる。

劇パト2の後藤と荒川の長い会話シーンを思い出させる。

 

ダーウィン事変』(5)

オメラスと名付けられたチャーリーの兄弟が登場。

名前の元ネタはル・グィンの『オメラスから歩み去る人々』だろう。

確かあの短編小説ではオメラスという素晴らしい都市の裏側では一人の少年が犠牲になっているというものだった。

オメラスで幸せに暮らすか、少年の犠牲を許容せずオメラスから歩み去るか。最後に後者の選択を採る人もいる。そんな話だった。

このオメラスというキャラクターはたった一人で幸せな世界の犠牲になっていることを表しているのだろうか?

なんにせよなんらかのメタファーであることは確かだろう。

 

 

2月に読んだ本

『ダート競馬の儲け方』

オープン特別や3歳馬について触れているダートの構造の話については面白かった。

 

『変な絵』

前作「変な家」と比較すると物語の方向性に振れすぎているような印象を受けた。

前作は建物としての家についての話と、家族としての家の話をうまく調和させた非常に良い出来ではあったが、今作はそれと比較するとその辺の作り込みが少々落ちているような気がする。

ただこのような謎を作り、結末まで楽しませる雨穴氏の筆力は格調高いものではないがしっかりとしていて非常に読みやすかった。

2月に読んだ漫画

『天国大魔境』(1)

荒廃した近未来の日本とを旅する男女と特異な能力を持つ少年少女が暮らす隔離された施設の場面が交互に展開される。

一巻を読んだだけではまだなんとも言えないが、今後に大きな期待を持てる引きを持たせた終わり方だった。

 

『大雪海のカイナ』(2)

天幕の少年カイナがアトランドの王女リリハと共に雪海へ降りるところから始まる。ナウシカっぽい設定と二国の争い。あまり目新しいものはなく、弐瓶勉特有のあまり説明しない平坦な雰囲気が物語に奥行きを感じさせないように作用している気がする。

 

『NOiSE』

弐瓶勉の傑作『BLAME!』の前日譚。

連続児童誘拐事件を追う女刑事裾野結とネットから異形の怪物を呼び出す教団の戦いを描いた作品。

弐瓶勉作品は基本的にあまり設定が説明されずに進んでいくが、この作品はBLAME!と比較してまだ我々の住む時代と近いためスムーズに世界観に没入する事ができた。

 

亜人ちゃんは語りたい』(11)

デミちゃん最終巻。

亜人という普通とはちょっと違う人との交流を描き、同じ人間として接することを語った傑作。

現代の人間社会で起きる差別や分断も、こうした人々のような理解と共存をきちんと行えば無くなるのではないかと思える。

しかしながら現実世界の人々はデミちゃんたちほど大人じゃないのだ。

 

『秘密の恋人』(1)

初めて読んだ作家さんの漫画。

雰囲気として少女漫画の香りを感じるのだが、百合っぽい方向に物語が進んでいきそうなので、次巻も楽しみ。